離婚の財産分与で車は対象になるの?

(まいちゃん)愛し合って結婚した夫婦が離婚するときは、思い出深い車の行方が気になります。

(ゆうとくん)そうですね。離婚時に車を財産分与の対象とするのかという疑問の声が少なくありません。

この記事では、離婚の財産分与で車は対象になるのか、なるとしてどのように分与するのかについて解説します。

離婚の財産分与で車はどうする?

まず、夫婦が離婚する場合の財産分与につて基本的なところを確認しておきましょう。夫婦2人の手にある財産には、特有財産と共有財産があります。

特有財産夫または妻が個人で所有する財産
共有財産夫婦2人が共有する財産

財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に2人で力を合わせて築いてきた共有財産を対象として、離婚時に公平に分配して清算する手続きです。離婚後の生活保障や慰謝料的な性格がないわけではありませんが、主な役割は清算にあるとされています。車が財産分与の対象となるかどうかは、その車が共有財産と特有財産のどちらになるかの判断次第です。車の名義人が誰になっているかで判断するわけではない点に注意しましょう。以下、夫または妻を自分、相手を配偶者と記します。

特有財産か共有財産かの区分けは比較的やさしい作業だといえます。自分が独身時代に購入した車であれば、自分の特有財産であり財産分与の対象にはなりません。配偶者が独人時代に購入した車であれば、もちろん配偶者の特有財産です。結婚後に購入した車であっても、独身時代に貯めたお金で購入した場合は同様に判断します。また、どちらかが親兄弟などから相続した車や、贈与を受けた車も特有財産となるため財産分与はされません。

このような事情がなく、婚姻期間中に購入した車であれば共有財産として扱われることになり、財産分与の対象となります。また、独身時代に購入した車であっても、婚姻期間中にかかった燃料代やメンテナンス費用などの出所が夫婦のお金であった場合を考慮すると、財産分与の対象になることもあり得ます。

ここで注意したいのは、婚姻期間中に自分または配偶者が個人的に小遣いを貯めて購入した車であったとしても、それぞれの特有財産にはならない点です。婚姻期間中の財産は、どちらがお金を出したかにかかわらず、基本的に夫婦2人の協力があって形成された共有財産だと考えられています。

特有財産となる主なケース共有財産となる主なケース
  • 独人時代に購入
  • 独身時代の貯金で購入
  • 自分の親族等からの相続
  • 自分の親族等からの贈与
  • 婚姻費用の中から購入
  • 結婚後の小遣いで購入
  • 維持費を婚姻費用で支払い
  • 夫婦2人への贈与

(まいちゃん)夫婦が使っている車には特有財産の車と共有財産の車があって、共有財産でなければ財産分与されないのですね。

(ゆうとさん)そうですね。特有財産か共有財産かをしっかりと見極める必要があります。

さて、財産分与の対象となる共有財産と判断された車を、どうやって分与するかが問題です。1台の車を分割することは、物理的には可能かもしれませんが、事実上は不可能といえます。2人で分けるように切断された車は走れませんし、壊れていない部品代くらいの価値しか残らないでしょう。そもそも新しい生活拠点に持っていけません。

そのため、車の財産分与ではお金で清算するという現実的な2つの解決策が一般的です。1つは、どちらかが車を所有して、価値に見合ったお金を相手に渡します。一般的に財産分与の比率は50:50とされているため、100万円の価値がある車であれば、清算に必要なお金は50万円です。2つめの方法では、車を売却して代金を2等分します。

<車の価値が100万円の場合>

車の処分方法自分配偶者
車を残す車を引き取って乗る50万円を受け取る
車を残す50万円を受け取る車を引き取って乗る
100万円で売却する50万円を受け取る50万円を受け取る

ただし、財産分与の比率が原則として50:50となるのは、2人の話し合いが決裂して、家庭裁判所に持ち込まれた場合です。話し合いで決められるのであれば、比率はいくらでも構いません。もちろん、50:50にすることも可能です。

また、50:50が原則とされているように例外もあります。婚姻期間中の共有財産の形成への貢献度が無視できないレベルでバランスを欠いていると判断された場合です。状況によっては、60:40や70:30といった配分比率になる可能性があります。

(まいちゃん)なんだか生々しい話ですが、離婚時の車の財産分与は避けて通れないものなのですね?

(ゆうとさん)そうですね。だからこそ、損をしないためにはしっかりとした知識が必要になります。

財産分与ではまずは車を査定に出すべき理由

財産分与では、まずは車を査定に出すべきといえます。査定を利用して車を売却し、代金を分ける方法は車を残す場合にくらべて揉めることが少ない方法です。売却金額というハッキリとした数字が出ているため、仮に売却金額に満足できなかったとしても、不公平さを感じにくいといえます。

ただし、査定は複数の査定会社に依頼すべきです。1社だけの査定では、自分はその査定金額に納得しても、配偶者からその金額はおかしいとクレームが入る可能性があります。複数の査定を比較したうえであれば、「安過ぎるのではないか、高すぎはしないか」という疑念も起こりにくいでしょう。

また、売却する場合は当然のこととして、売却しないで乗り続ける予定であっても査定に出すべきです。その理由は、車の現在価値がわからないことには財産分与ができないためです。その車の価値が100万円であれば、1人の取り分は50万円となりますが、120万円なら60万円となり、大きな違いがあります。そのため、正確な価値を割り出すためにも、まずは査定に出すべきです。売却しないのだから査定に出す必要はないとして、根拠が曖昧な価値を前提にしていたのでは、まとまる話もまとまらなくなります。

(まいちゃん)車の査定は正確な価値を知るために必要なことなのですね。

(ゆうとさん)複数の査定で相場がわかれば、自分が思っていた額と違っても納得できますからね。

車の財産分与でトラブルを避ける5つのやるべき事

車の財産分与でトラブルを避けるために、やるべきことが5つあります。

【1】離婚届を提出する前に決める

車の財産分与をどうするかは離婚前に話し合うことができます。協議離婚後に請求することも可能です。ただし、話し合いがつかない場合に家庭裁判所に持ち込めるのは、離婚から2年以内と民法第768条第1項に定められています。

2年という期間は離婚後の新しい生活を構築している中では、あっという間に過ぎてしまってもおかしくありません。財産分与の請求をする余裕がないままに2年経ってしまったというケースも考えられます。したがって、車はもちろんのこと、財産分与そのものを離婚届けの提出前に決めておくことが重要です。

【2】車の名義人を確認する

車の名義人が自分と配偶者のどちらになっているかは、財産分与そのものには影響しません。しかし、離婚に伴う手続きに影響する可能性があります。自分名義の車を配偶者が引き継いで乗る場合には、名義変更が必要です。名義変更をしないままでいると、自動車税の納付書がいつまでも自分に送られてきます。

さらに厄介なのは、車の名義がローン会社等になっている場合です。ローンを組んで購入した車で、ローンの返済が終わっていない場合に考えられます。うっかり忘れていて売却しようとしたときに自分名義ではないことが判明し、慌ててしまうといったことがないように確認しておきましょう。

【3】車の売却価格の査定をしておく

前述したように、車の売却価格を知っておくことは車が共有財産になる場合に欠かせないポイントです。早い段階で複数の査定をしておけば、財産分与の話し合いにあたって心理的な余裕が生まれるでしょう。

【4】自動車ローンの残額を確認する

ローンで購入した車の場合、名義の問題もありますが、ローンそのものの残債務がいくら残っているのかも重要です。

財産一般で考えれば、マイナスの財産も財産に入ります。相続財産はその考え方です。ところが、夫婦で築いた共有財産への貢献が前提となる離婚時の財産分与においては、マイナスの財産に貢献という評価ができません。そのため、財産分与の対象となるのは、あくまでもプラスの財産だけです。

したがって、車のローンの残債務が直接的に財産分与の対象になることはないため、一見すると残債務の確認は大きな問題ではないように感じるかもしれません。しかし、ローンの残債務がある車の価値は、売却して得られる金額(評価額)からローンの残債務を差し引いて評価します。ローンの残債務が評価額を上回っても、マイナスの数字は財産分与に入りません。

(まいちゃん)車のローンが残っているときは差し引いて価値を判断するのですね。

(ゆうとさん)そうですね。その結果がマイナスのときは分与しないため、ローンの返済義務がある車の名義人には厳しいかもしれません。

【5】離婚協議書を作成する

財産分与の協議が成立して車の扱いが決まったら、その内容を離婚協議書として文書に残します。さらに、公正証書にすることが重要です。まず、文書化する意味は合意内容の証明書類とすることにあります。口頭の合意だけでは後日になって否定されると、水掛け論になってしまいます。また、公正証書にすることで合意内容を守らせる心理的な効果があるとともに、強制執行認諾文言付公正証書にすることで、強制執行の申し立てに必要な債務名義の1つである執行証書となる点が重要です。

強制執行認諾文言付公正証書にしていないと、裁判所に支払いを命じる判決を出してもらうなど、債務名義を取ってから強制執行を申し立てなければなりません。この請求訴訟等を起こす必要がなくなるメリットは大きいといえます。

離婚協議の形式強制執行の申し立て手順
口約束請求訴訟等で債務名義を取ってから申し立てる
2者間で作成した離婚協議書請求訴訟等で債務名義を取ってから申し立てる
強制執行認諾文言付公正証書強制執行の申し立てができる

(まいちゃん)強制執行認諾文言付公正証書にしておけば、財産分与が約束通りに実行されないときに強制執行の申し立てができるのですね。

(ゆうとさん)しかも、公正証書は協議離婚成立時に作成するため、強制執行認諾文言が付いていても作成を反対される可能性が低いですね。

ローンが残っている車はどうやって財産分与するの?

ローンが残っている車を財産分与の対象とする場合の分け方は、ローンの残債務がない場合と同様です。自分または配偶者が車を引き取り、相手には評価額の1/2相当額をお金で支払う方法と、車を売却した代金を2人で分ける方法があります。

ローンの残債務車の評価額・売却額財産分与対象額
50万円120万円70万円
100万円100万円0円
120万円80万円0円

ローンの残債務が車の評価額以上となる場合は、財産分与対象額は0円です。車の評価額がローンの残債務より高い場合をアンダーローン、低い場合をオーバーローンと呼んでいます。アンダーローンであれば、車を売却して残債務を一括で返済し、残ったお金を財産分与として配分可能です。

しかし、オーバーローンの場合は、車を手放したうえ残債務の返済義務が残ることになるため、売却を選択するメリットは少ないといえます。以下はアンダーローンでローンの残債務を差し引いて、150万円の価値が残る車の例です。

自分が車を引き取って評価額の1/2を配偶者に支払う方法をとる場合

自分の取り分車の評価額150万円配偶者に75万円合計75万円
配偶者の取り分車なし自分から75万円合計75万円

車を売却してしまえば、ローン完済後に残る売却代金の150万円を75万円ずつ分けるため、自分の特有財産から75万円を支払う必要はありません。しかし、財産分与する財産が車1台だけということは考えにくく、他の財産を含めて考えるのが一般的だといえます。

自分の取り分車の評価額150万円預貯金150万円合計300万円
配偶者の取り分車なし預貯金300万円合計300万円

車以外に預貯金がある場合、預貯金の配分額を車の評価額を加味したものとすることで、公平な財産分与が可能です。

自分の取り分車150万円預貯金0円25万円支払い合計125万円
配偶者の取り分車なし預貯金100万円25万円受領合計125万円

預貯金等の財産が150万円に満たない場合は、自分の特有財産から不足額の半分を配偶者に支払います。たとえば、預貯金が100万円しかない場合、車の評価額との差は50万円となり、25万円を支払うことで、双方の取り分が125万円となるため公平な財産分与です。

(まいちゃん)車の価値が高い場合は、配偶者に自分の特有財産からお金を支払う必要が生じるケースもあるのですね。

(ゆうとさん)そうですね。その意味では他の財産が多いほうが財産分与をしやすいといえるかもしれません。

別居した後に買った車はどうなる?

別居後に買った車が財産分与の対象になるかどうかですが、離婚を前提としている別居である以上は、別居した時点で夫婦の協力関係は終わっていると考えられます。つまり、別居後に買った車は2人の協力によって増えた財産とは呼べず、財産分与という形で清算すべき共有財産ではありません。

共有財産となり得るのは、別居の開始時点ですでに形成されている財産です。ただし、別居時点で協力関係が終わるとする考え方は原則であり、例外があります。子どもの養育など経済的な協力関係がある場合は、共有財産と判断される余地が残るでしょう。

まとめ

離婚の財産分与で車が対象になるのは共有財産だと判断される場合です。評価額に相当するお金を支払ったり、売却して代金を折半したりして分与しますが、実際にはすべての共有財産を合算したうえで1/2ずつに分配するケースが多いといえるでしょう。その際、ローンの残債務の有無や名義の確認など5つのやるべきことをしっかりと行うことが、車の財産分与を円滑に進めるポイントです。

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編集長のゆうとです。車好きな父親に影響されて、これまで新車、中古車問わず様々な車に乗ってきました。車の売却やお得な買い替えなどを父親と一緒に調べていくうちに関連するノウハウも学びました。これからもメーカーや国産車、輸入車問わず様々な車について知識を深めて、このブログを通じて車に関する情報を共有していきます!